旧東海道岡部にて130年続くお店は2021年リニューアル。令和5年度ふじのくに魅力ある個店特別賞を受賞し、受け継がれてきた味を今に伝え続けています。
家族3世代で昔ながらの製法と味を受け継ぐ
お店は、旧東海道岡部宿の商店街にあります。130年続くお店の建物は2021年に建て替えられ、温もりがある綺麗な店内となっています。
糀を作られるのは6代目店主の萩原伸明さんとそのお父様。店頭には萩原さんの奥様と娘さんが立たれて、家族3世代4人が力を合わせてお店を営まれています。
家族皆がこれまでの甘くて美味しい糀を受け継いでいきたいとの想いを持たれていて、機械を使わずに手間と暇(時間)がかかっても昔ながらの製法を大事されていることが萩原こうじやの大きな特徴となっています。
店主の萩原さんは、老若男女が来られるお店づくりを目指しているそうで、ここでも家族3世代である強みがそこで生かされているように感じられます。
古くからある糀の発酵文化を新しく味わえる
昔からの生糀、米糀味噌、金山寺味噌は、お店の定番となっています。金山寺味噌は、お米と麦と大豆にナスと生姜が入っていて、ご飯のお供にも最適です。
それに加えて、リニューアル後は、奥様と娘さんのアイデアにより、発酵あんこ、コチュジャン、甘酒ドリンクなどこれまでお店になかった商品が新しく並ぶようになりました。
女性や若い方も楽しく糀に親しめる商品が加わり、そのようなお客様も増えてきているそうです。
私は、他店で飲んだ甘酒の独特の甘さが少し苦手だったのですが、こちらで試しに飲んでみた甘酒バナナミルクは全く気にならず、美味しくゴクゴクいただくことができました。
飲む点滴と言われている栄養満点の甘酒をこうしていただけるのは嬉しいですね。
食にもサスティナブルな選択を
SDGs、サスティナブル(持続可能な)社会と言われる今日ですが、微生物の働きを利用した発酵食品もサスティナブル食品と言えるのではないでしょうか。
糀は、蒸したお米をこうじ菌という微生物が分解して成分を変化させる発酵という作用により、甘みや風味などが増した物です。しかし、このこうじ菌がなかなかデリケートで良い働きをしてもらうには適切な湿度、温度の管理がとても大切。これがうまくいかないと、美味しい糀ができないのです。
それを行う麹室(むろ)での温度と湿度の管理を、萩原こうじやでは天窓と炭火と鍋の湯により行っています。電気は照明があるだけでエアコンで室内管理しているわけではありません。工程の最中では、夜中でも3時間毎に状態を確認しているそうです。
大変手間がかかりますが、それでも続けられる理由を尋ねると、
「自分で見ていい糀ができたというときは、嬉しい。糀菌がお米に花が咲いているように見える。そうして出来た麹を買われたお客様から、本当に美味しかったよ、甘酒作って美味しかった、などの言葉を直接聞くことができると本当にやりがいになる。ありがたいですよね。」と萩原さんはお話しされていました。
そのお店の営みが評価されて、令和5年度ふじのくに魅力ある個店の静岡県「地域のお店」サスティナブルデザイン賞を受賞されました。
家族で家業を継ぐ
実は、萩原さんがお店に専念したのはつい1年前。それまでは一家を支える為に安定した収入が見込める会社勤めをされていて、お店は手伝いで入っていたそうです。
それが数年前に長くお店を営まれていた5代目のお父様がいよいよ高齢になられてきて、お店の先行きが見えななくなってきました。
このままでは糀屋が途絶えてしまう。奥様がなんとか残したいと思いながらも一人では到底できないし、ご主人に継いでともなかなか言えず、迷う最中で涙していたこともあったそうです。
それでも娘さんが手伝うと言ってくれたことや奥様の気持ちがご主人に伝わり、最終的にご主人が決断されたそうです。
「父も長く続けてきてくれたし、もう運命かな、やるしなかい。家族みんな同じ気持ちで、つなげていくような形でね。」とその時の気持ちをご主人がお話ししてくれました。
そんな想いがあるご家族で営まれている萩原こうじや、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
店名:萩原こうじや
メニュー:米糀味噌(小)440円、甘酒ヨーグルト430円、他
営業時間:9:00〜17:00 (木曜のみ9:00〜18:30)
定休日:日曜、月曜
電話:054-667-0107
住所:静岡県藤枝市岡部町内谷94-2
駐車場:店舗前2台、通り斜め向かい1台
座席:3席
公式HP:萩原こうじや(外部リンク)